あの彼の前世が霊夢に出た
あの彼、大柄なくせに尖った刃物がコワイ彼、いまはどうしているかしら。と、いってもわたしのいい彼、ではなく、真向かいの喫茶店「モーツアルト」からわたしの占い処へ電話してきた彼のことです。銭洗い弁天さんにお詣りした帰りです、お金がなくて、でも占ってほしい、1000円で、と遠慮がちな声で電話してきた湘南、葉山の漁師見習い、32歳。
本命星 九紫火星 月命星 二黒土星 宿命宮 震 寅卯空亡
10分のつもりが、2時間にもなって、規定料金だともちろんン万円ですが、わたしも請求できなくてためらっていると、彼は、帰りの交通費以外はぜんぶ置いていきますと、しわくちゃの千円札をごつい手でアイロン代わりに伸ばし伸ばしで6000円ならべ、不足分は出世して何倍かにします、と言ってくれたのです。
葉山の漁師見習いといっても地元の人ではありません。故郷は四国・愛媛です。家族につぎつぎと不幸なできごとが起こります。父親、母親ともに変死(原因不明)、祖母のつよいすすめで彼は家を捨てます。「この家は呪われている。家にいたら危ない。家を出なさい」と泣いて頼む祖母といっしょに泣いて別れて10年以上がすぎた。
四国は霊場です。霊的な能力のある人たちも多く、いまこの平成の世でも、霊能力者同士の戦い、命のやりとりを賭した呪詛もおこなわれています。彼の祖母も霊能力のある人だということです。祖母に懇願され、そして本土に渡ってあちこちの町で日雇い労働や山奥で林業に従事したりして、ながれながれて葉山の海です。そして銭洗弁財天、さらに喫茶モーツアルト、あげく占い処のわたし。なにか目にはみえないもののはからいですね、きっと。
どこの地でどこで働いても落ち着けない---。
愛媛に帰りたいが、帰ってもいいか-----。
わたしの鑑定は「帰りなさい」でした。
もう逃げてはいけない。
先祖の霊から逃げないで、きちんと向き合いなさい。
お寺、お墓、仏壇で、ご先祖さまにこれまでのことをきちんと報告しなさい。ご先祖はあなたにふる里で会いたがっている。ご先祖はあなたの味方ですよ。
ちょうど密柑山のオーナーが従業員を募集している。ああ、それは渡りに舟、愛媛行きの舟に乗りなさい。え、あ、そう、いまは舟に乗らなくても車で帰ることができる。そう、どっちでもいいのよ、あははは。と、彼は現れたときの疲れた顔から一変したように明るい表情になって元気よく、大きな背中をゆすりながら去っていきました。
それから数日後です。その彼の前世がわたしの霊夢にあらわれました。彼は恐怖の悲痛な叫びをあげてもがき苦しんでいます。血まみれです。その彼を何者か男性がめった刺しにしていたのです。ブス、ブスと刺して、差し貫いて、刺して。でもでも、これで湘南葉山漁師見習いの彼はもう大丈夫です。彼の家の不幸の連鎖はもう止まります。深い恨みを、刺して刺して刺しても晴れないくらいの恨みをわたしがわかってあげました。怨念の霊はその怨念の情を心底わかってくれる現世の人に会えばその恨みは晴れます。
わたしはこのできごとを尊敬する心霊界の大先生に話し、わたしの鑑定とアドバイスを検証していただきました。間違いはどこにもないということでした。愛媛の住所を聞いていなかったので連絡ができないのは残念ですが、その手の念を軽々と飛ばせる能力のある人にきょう依頼しました。いま、愛媛で働いていたら、、、この話は彼に伝わっています。
あ、どうもどうも、この手の怪しげな話の嫌いな方々には謝ります、ごめんなさい。
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